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カルロ・ジェズアルド(Carlo Gesualdo 1566-1613)は、イタリアの貴族であり、後期ルネサンスの作曲家・殺人者。ヴェノーザ(Venosa )公国君主・コンツァ(Conza)伯爵。激しい情感表現に富むマドリガーレや宗教音楽で有名である。その半音階的な音楽語法は、その後19世紀末まで現れないものだった。不貞の妻とその愛人を殺害したことで悪名を馳せた。
ジェズアルドが余生において罪悪感に苦しめられたという証拠は無視できないし、自作においては罪の苦しみを表現したのかもしれない。ジェズアルド作品で一番明らかな特徴は、極端な感情を示す語への、風変わりな曲付けである。「愛」「苦痛」「死」「恍惚・喜悦」「苦悶」などといった言葉がジェズアルドのマドリガーレに頻繁に登場しており、歌詞のほとんどは恐らくジェズアルド自身によって作詞されたのだろう。
ジェズアルドは殺人犯として有名になった半面、ルネサンス音楽の最も実験的かつ最も表現主義的な作曲家の中でも、間違いなくとりわけ大胆な半音階技法の作曲家として今なお名高い。ジェズアルドが用いたような半音階進行は、19世紀の後期ロマン派音楽になるまで再び現れることがなく、調性音楽という文脈においては直截に並び立つ存在がなかったのである。
ジェズアルドの出版作品は、宗教曲、世俗曲、器楽曲の3つのカテゴリーに分けることができる。中でも最も有名なのは、6つのマドリガーレ集(1594年から1611年まで)と、《聖務週間日課のためのレスポンソリウム集》(1611年出版)である。出版作品のほかに、ジェズアルドは大量の手稿譜も遺した。未出版作品の中にも、半音階技法による最も表情豊かな表現力を見ることができるだけでなく、モノディのような前衛的な作曲形態による楽曲も含まれている。そのいくつかはフェラーラ滞在中に、特に同地の卓越した音楽家のために作曲された。
《マドリガーレ第1集》は、様式において同時代の他のマドリガーレ作曲家にきわめて近い。後年のマドリガーレ集では、転調や対斜、リズムの激しい対比の試行が増加しており、《第5巻》と《第6巻》はその最も有名で著しい例となっている(《かなしや吾は死す "Moro, lasso, al mio duolo" 》と《美しい人よ、貴女がいないと "Beltà, poi che t'assenti" 》は、ともに 1611年に出版された《第6巻》に所収)。
ジェズアルド様式の特徴は、部分的な構成にある。つまりは強烈な、ところどころ衝撃的な半音階進行から成る比較的緩やかなパッセージと、急速なテンポによる全音階的なパッセージとの交替である。歌詞は、一つ一つの語句に最大限の注意が払われ、音楽によく馴染んでいる。半音階的なパッセージには、単独のフレーズの中に半音階の12の音すべてを含む例もあるのだが、それらは別々の声部にばら撒かれている。ジェズアルドは半音階的な3度進行をとりわけ好み、一例を挙げると、《かなしや吾は死す》の開始において、イ長調とヘ長調の主和音同士を、また嬰ハ長調とイ短調の主和音同士を連結している。
最も有名な宗教曲は、《聖務週間日課のためのレスポンソリウム集》であろう。様式的には、マドリガーレ・スピリトゥアーレ(聖句に基づくマドリガーレ)として作曲されている。とりわけイエスの苦悩や、聖パウロがイエスを裏切った罪悪感についてのくだりにおいて、後年のマドリガーレ集に見られるような鋭い不協和音や衝撃的な半音階の並置が使われている。
ジェズアルドは、シジズモンド・ディンディアやアントーニオ・チフラといった作曲家が、その様式を模倣して一握りのマドリガーレを作曲したにもかかわらず、当時はほとんど影響力がなかった。作曲家として再発見されたのは、やっと20世紀になってからである。付け加えると、20世紀の作曲家は、ジェズアルドの作品に対して敬意を払ってきた。イーゴリ・ストラヴィンスキーは、《ジェズアルドのための記念碑 Monumentum pro Gesualdo》(1960年)の一部に、ジェズアルドのマドリガーレ《美しい人よ、貴女なくては》を編曲して利用した。
16世紀末から17世紀始めにかけて、実験的な音楽の作曲家は他にもいたが、ジェズアルドの創作は特異で孤立しており、後継者も模倣者もなかった。ジェズアルドは、音楽史上の魅力的な袋小路のひとつといえようが、その立場は犯罪によって破滅した、跡取りのいない君主という人間的な孤立に似つかわしい。
カルロ・ジェズアルド ◇公開日: 2012年12月31日 |
マドリガーレ 第4集 (出版:1596年) ◇再生:
high / normal / low ◇演奏時間: 37分57秒 ◇公開日: 2013年03月01日 (J) |
3. 私は沈黙の中で静かでならなければならない(第1部) ◇再生: high / normal / low ◇演奏時間: 0分26秒 ◇再生回数: 332回 (J) |
4. 無駄に、残酷に(第2部) ◇再生: high / normal / low ◇演奏時間: 0分52秒 ◇再生回数: 336回 (J) |
7. 私が思ったのと同じように(第1部) ◇再生: high / normal / low ◇演奏時間: 1分20秒 ◇再生回数: 330回 (J) |
8. おお、ここまで残酷な愛(第2部) ◇再生: high / normal / low ◇演奏時間: 2分19秒 ◇再生回数: 329回 (J) |
9. わが心よ、ああ、泣くことはない(第1部) ◇再生: high / normal / low ◇演奏時間: 1分9秒 ◇再生回数: 330回 (J) |
10. だから私を傷つけないで(第2部) ◇再生: high / normal / low ◇演奏時間: 1分54秒 ◇再生回数: 328回 (J) |
13. 最後に溜息をつき、私は死ぬ(第1部) ◇再生: high / normal / low ◇演奏時間: 1分6秒 ◇再生回数: 323回 (J) |
14. 人生は死を歓迎する(第2部) ◇再生: high / normal / low ◇演奏時間: 1分19秒 ◇再生回数: 326回 (J) |
17. 見よ、従って私は死ぬだろう(第1部) ◇再生: high / normal / low ◇演奏時間: 1分20秒 ◇再生回数: 326回 (J) |
18. ああ、すでに私は血の気が引く(第2部) ◇再生: high / normal / low ◇演奏時間: 2分7秒 ◇再生回数: 324回 (J) |
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